世界の果てでダンドゥット

ダンドゥットは今、現在が一番おもしろいぞ!

インドネシアの識字率2024

毎年発表されている統計データで、12月にはいってインドネシア中央統計局から発表された。

まず、10代後半から20代前半の識字率

15歳~24歳の識字率、男女別 男99.82 女99.84 合計99.83

15歳~24歳の識字率、州別 

中央パプア州と山岳パプア州が90%(=10人に1人非識字者)という低い値。それ以外は大部分99.9%以上で、1万人に10人から3人ぐらい非識字者がいるという状態。四捨五入すると100%で、これは〈識字率調査をしている国〉ではもっとも高いグループになる。

じゃあ、〈識字率調査〉をしていない国ってのはどこかというと、OECD諸国などいわゆる先進国なのだ。日本もEUもちゃんとした識字率調査はやってなく100%とみなしている。

インドネシア含むASEAN諸国の識字率が高いのは、教育行政の成果でもあるが、移民・難民が少ないという事情もあると、わたしは睨んでいる。ヨーロッパや北米など、難民・移民が多い地域では100%にはならないはずだ。日本や韓国もちゃんと調査したら、99%ぐらいになるはずである。

ヨーロッパの比較的貧しい小さい国、中央アジア諸国の若者識字率が高いのも、移民・難民が少なく、単一言語でやっていける国だからでしょう。

教育・ジェンダー問題以前に、言語の文字表記の問題

識字率の話になると、教育行政やジェンダー差のことばかり注目されるが、それ以前に母語(日常の言葉)の表記体系がちゃんとしていない言語がたくさんある。インドネシアの山岳パプア州や中央パプア州の言語群はその代表だ。文字の読み書きを覚えるのは母語以外の言語になる。つまり日本で例えれば、最初から英語の読み書きを習うようなもんだ。

先住民族の権利として、母語の教育を推進する動きは世界中にある。しかし、当面の問題は、保健所のお知らせとか津波避難訓練とかガソリンの補助金とか、日常生活に必要な文字情報であって、それらの表現が母語に無いと、外国語を覚えるのと同じ困難な学習になるわけだ。

これはベトナムやタイ、ミャンマーでも共通する問題で、公用語と離れた言語を話す人々にとっては、すごい負担になるわけだ。民話や伝説を伝えたり、聖書の翻訳を読めても、日常生活には役に立たないよなあ。

ジェンダー不平等指数、着実に下がっているけど、グラフの線の角度、誇張しすぎ

4月に発表された就学率・終了率のデータのうち、男女別の初等・中等レベルの終了率、小学校(97.47 - 98.19)・中学校(88.86 - 92.10)・高校(64.14 - 69.54)すべての段階で、女子のほうが終了率が高い。男の子は教室で座って勉強するのが嫌いなのか?

さて、公用語としてのインドネシア語の話だ

15歳~59歳、いわゆる労働力世代の識字率 男99.28 女98.88 全体99.08

15歳~24歳ではわずかに女子のほうが高いのに、労働力世代では女のほうが低くなっている。高年齢では女子識字率が低いせいである。

インドネシアは独立後、旧宗主国オランダ語でもなく、多数派のジャワ語でもなく、少数派のマレー語を元にしたインドネシア語を国家語にした国である。憲法公用語を規定している数少ない国の一つである。

これが、アフリカや中東諸国南アジアを悩ませている問題を無くした、あっと驚く国家理念である。

前述のように、パプアはやはりハンディがあるのだが、それ以外の地域は同じ語族であり、音韻も統語法(文法)も似ている。外国語からの借用語も作りやすいし、音とスペルの関係も例外が少なく学習しやすい。

これで、99%の識字率を達成する条件がそろった。これがミャンマーやフィリピンに比べ有利な点だ。フィリピンなんかマニラを含む北部を中心とするタガログ語にした結果、中部南部との格差が大きく、苦労している。ミャンマービルマ語圏だけは識字率が高いけれど、語族の異なる中規模言語があって、なかなか国全体を統括する国語にならない。

州別の識字率の差は何を示すか?

じっちゃんばっちゃんまで含む識字率、これが国際的に比較するデータとして用いられることが多い。

15歳以上の識字率 男97.69 女95.66 全体96.67

15歳以上の識字率、州別

山岳パプア州が70.37%、中央パプア州84.69%がという低い値である以外おおむね95%以上なのだが、なかにやや低い州がある。

わたしはてっきり、カリマンタンやスラウェシ、マルク州が低いと思っていた。なお、スマトラ島はもともとマレー語が母語の住民が多い。ところが……

15歳以上、15-44歳、45歳以上の非識字者率州別

45歳以上では、なんと、中部ジャワ州東ジャワ州が10%越え、ジョグジャカルタ特別州とバリ州も9%なのだ!東ヌサ・トゥンガラ州西ヌサ・トゥンガラ州南スラウェシ州も高い。

なぜだ?

これらの州は人口密度が高く、農業生産力が高く、水田稲作が多く、コメも塩も魚も湧き出る地だ。ニワトリと猫が散歩し、花と樹の実が生い茂る地。

プランテーションが少なく、大規模工業も少ない地域である。つまり、小農民・零細事業者が多い地域なのだ。それが、識字率に影響しているのだろうか?

もう一つ、これらの地域の言語はインドネシア語との違いが大きいせいかもしれない。ジャワ語、ブギス語、バリ語など強い言語が行われている。(詳しい分析はわたしには不可能だけど)

ともかく、このブログで紹介しているダンドゥットが盛んな地域は、インドネシア全体では文盲率が高い地域なのだ

なお、現在でも、全体の識字率がなかなか上昇しないのは、

文字の読めないバッチャンが元気に長生きしているから

「わしゃあ、孫を10人育てて、今は、ひ孫5人の面倒見てんだ。字なんぞ読めんでも、なんも不自由せんわい!」

(実際は老人の一人暮らしが、わずかながら増えております。老人の自殺率も高い。この記事のテーマではないので、詳しいことは略す)

Aulia Putri - Tang Ting Tung 行政上は東ジャワ州だが、言語はムラユ語(マレー語)に近いらしいマドゥーラ島から。この歌は自動翻訳ではインドネシア語に認識される。
2,138,514 views  Premiered on 18 Aug 2024 

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