なんと日本でCDシングル(直径3インチの玩具みたいなやつ)が出ていたらしい

2020年に7インチアナログ・レコードが出た。こんなもの買う酔狂なコレクターがいるのかい?その商品説明にも、いろいろ怪しい点が多い。
インドネシアの男女ボーカルデュオ、チャンプルー・DKIの1990年作。インドネシア本国でミリオンヒットを記録した「コーヒー・ダンドゥット」と、映画『ちびまる子ちゃん わたしの好きな歌』の挿入歌にもなった「ダンドゥット・レゲエ」をカップリング!
この企画以前に〈チャンプルー・DKI〉というユニットが存在したのか不明。インドネシア本国でミリオンヒットを記録できるわけがない。なぜなら記録する団体が存在しないから。
インドネシアの大衆歌謡=ダンドゥットの歌手として活動していたFahmy ShahabとHetty Sundjayaによるユニット、チャンプルー・DKI。久保田麻琴がプロデュースをつとめ、サンディ&サンセッツのメンバーが参加した1stアルバム『Campur DKI』収録のキラー・チューンが初アナログ化です。
もともとはベネズエラ産でHugo Blancoによるインストゥルメンタル曲。ベネズエラ本国でも作詞作曲者の権利問題が起きたらしいが、あんまりややこしいので略す(ウェブで調べてもよく判らん)
さらに困ったことに、歌詞付き、つまりボーカル物の最初が判らん。1960年~61年のスペイン語バージョンが見つからないのだ。
在日本ベネズエラ大使館!に記事があり、スペイン語版の日本語訳(訳:石橋 純)が載っている。けど、スペイン語版の最初の録音については情報なし。
まさか日本語バージョンのほうが早いってことはないと思うけど。イタリアの女性歌手Minaがスペイン語で歌ったもの(1962年4月って情報が英語版ウィキペディアに載っている、あんまり信頼できないけど)がヨーロッパ~北米でヒットしたが、日本のほうが1961年に出ているのだよ。
タイトルは「コーヒールンバ」、ルンバのリズムではありません。こういう事を書くと、こだわるなって言われるけど。
西田佐知子版のシングル盤は欲望のブルース / コーヒールンバ(DJ-1157:1961年8月1日)(訳詩 中沢清二)正規音源がYoutubeにもストリーミング・サービスにもないので、各自かってに探してくれ。
西田バージョンもいいけど、ザ・ピーナッツ版は、当時の世界全体(ラテンアメリカ、共産圏や南アジアを含む)でも最高の水準だと思うんだけど、日本贔屓かなあ。
コーヒー・ルンバ · The Peanuts 作詞 音羽たかし、キングレコード文芸部員の共同ペンネーム、個人名ではない
℗ King Record Co.,Ltd Released on: 1961-12-10
これほど有名な曲、ヒット曲なのだから、台湾やシンガポール、あるいはジャカルタからカバーが出てもいいと思うが、残念ながらわたしの能力では検索できず。"咖啡倫巴"で検索すると、やたらとウクレレ演奏が出てくるね。
ってことは、インドネシアのミュージシャンは、この「コーヒー・ルンバ」を知らなかった、と言っていいのかな?うーむ。1970年代にもいろいろな有名歌手がカバーしていたから、インドネシアに伝わらなかったのは不思議だけど。
さて、チャンプルーDKIの「コーヒー・ダンドゥット」が発表されたのは1990年、レコード会社のバブル景気がまだ続いていいた時期で、こんな企画物を出す余裕があったのでしょう。
わたしは現物を見たことがないので、Discogs.comのデータをそのままコピペ。Discogs.comのデータはボランティアが勝手に書き込んだもので、信用できない場合も多いのだけど、他にないのでしかたない。なお、グループ名のローマ字表記をインドネシア語で読むと、チャンプル・デ・カ・イ、インドネシア語のPhoneme (音素)には長音/短音の区別はナシ。
Campur DKI – Campur DKI
Label:Zebrazone – TECP 28505
Format:CD, Album, Stereo
Released:31 Dec 1990
Manufactured By – Teichiku Records Co., Ltd.
Distributed By – Teichiku Records Co., Ltd.
Recorded At – Kula
Recorded At – P 2 S C
Recorded At – Pro Sound Studio, Jakarta
Recorded At – Triple M Studio, Jakarta
Recorded At – Alchemy
Mixed At – Silver Planet, Hong Kong
Mixed At – Alchemy, Japan(これって、JOJO広重が設立した大阪のインディーズ・レーベルのスタジオ??)
Bass – King Champ, Poyo S.
Co-producer, Arranged By, Engineer – Lilik Aribowo
Design – Sachiko Kikuchi
Directed By – Ken Shiina
Drum Programming, Arranged By, Engineer – Hideo Inoura
Drum [Kendang] – Digital Madi*
Engineer – Miskamto, P.W.Herman
Guitar – Harry Subarja
Guitar, Arranged By – Keni Inoue
Guitar, Mandolin – A. Hermana
Keyboards – Daddy M, Iwan "Elephant" Gajah, Kazuto Shimizu
Liner Notes – 藤田正
Management [Production] – Try Music Publisher Co.
Photography By – Perry Pieter
Producer, Mixed By, Keyboards, Arranged By, Engineer – Makoto Kubota
Suling – Suki Midi*
Vocals – Fahmy Sharp*, Hetty Sundjaya
録音スタジオがいっぱいあるが、インドネシア側のミュージシャンと日本側ミュージシャンがいっしょに演ったかどうか不明。どうも別々にダビングしたように思える。インドネシア側のプロデュース、アレンジはLilik Aribowo。
ミュージシャンの人選はコーディネーターの椎名健だろうか?ほかの日本企画のインドネシア物にも関わっていた人だ。
それで肝心の音だけど、Youtubeにもストリーミングにも公式・正規音源ナシ
次のビデオ・クリップは正体不明の方のアップロード
英語で解説があるのでコピペ(太字は引用したわたし)
THANK YOU EVERYONE who drop the comments!!
This is mega hit song of 1991 in Indonesia,a Dangdut version of latin classic song titled Coffee Rhumba.Filmed in Jakarta on super eight(I mean very low badget video clip).Film is shot and edited by Atsushi Abe.Track was produced by Makoto Kubota (Sandii & the Sunsetz).
In memory of Bapak Lilik Aribowo a Great Producer/Arranger and Bung S'poyo the Funkiest Dangdut Bassman ever.and also Gendang MADI the legend and Suling Suki.Their music will live forever...R.I.P.(参加メンバーは他界しているらしい)
チャンプルDKI「コーヒー・ダンドゥット」久保田麻琴プロデユース
撮影/演出/編集:阿部敦史
コーディネート:椎名健
久保田麻琴って人は、細野晴臣や大瀧詠一みたいな感度の鋭い人だと思うけど、実際にできあがったものを聴くと、それほどでもない(スマン!)配偶者のSandiiのカバー
Sandiiのカバー、アルバム『Airmata』より
次の作品は、ハワイ物・沖縄物・昭和歌唱・ニューオリンズ物などをカバー。
久保田麻琴と夕焼け楽団 『ハワイ・チャンプルー』
℗ TRIO RECORDS オリジナルLPレコードは1975年発売
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インドネシアでのリリースはカセットテープで、Campur DKIというユニット名は無し。
Fahmy Sharp Shahab* & Hetty Sundjaya – Kopi Dangdut
Label:Dian Records (2) – none
Format:Cassette, Album
Country:Indonesia Released:Dec 1990
カセットテープからのアップロード、
マレーシアでも発売されたらしい。

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2000年代になるとFahmi Shahabのオリジナル曲として定着したようだ。次の音源は、わたしの耳を信用すれば、新録音ではなく、前の録音をいじくっただけだと思う。ボーカルも演奏も同じに聞こえる。
Fahmi Shahab - Kopi Dangdut Copyright © 2001 Media Cipta Persada(VDCを作るメーカーらしい。音源の権利者ではない)コピーライト2001年も完全には信用できないけど、容貌から25年ぐらい前に見える。VDC物としては映像の質がいいね。
Title : KOPI DANGDUT
Artist : FAHMI SHAHAB
Songwriter : FAHMI SHAHAB & ANDI HARDI
ソングライターがFahmi以外にAndi Hardiという人だが、Andiのほうがインドネシア語の歌詞を作って、Fahmiがラップ部分を作ったらしい。現在出回っているダンドゥット歌手のカバーでは、二人の共作とするものFahmi単独作にするもの、両方ある。
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どうも2020年に、この歌が剽窃だというウワサがSNSで広まったらしい。パクリや盗作の話題はSNSで広まりがちだ。上記の事情を知る日本人としては、何をいまさら、という感想であるのだが。コロナ禍で世の中がイライラしている時にSNSで荒れたのでしょうか?それとも、TikTokなどで拡散したのでしょうか?
インドネシア語が解る方は、次のビデオどうぞ。わたしは解読不能です。著作権について話している。
KOPI DANGDUT PLAGIAT LAGU VENEZUELA? FAHMI SHAHAB BERSUARA ❗️ 72,908 views 23 Oct 2020
以上でオリジナルについての考察はおしまい。
ミュージシャンが被っているのが次のアルバム(データはDiscogs.com)。既成の曲を繋いで、ノンストップ・バージョンとした安易な企画物であるようだ。 Ikke Nurujanah とIda Lailaが共演しているわけではない。こんな仕事をこなしていたミュージシャンであるわけだ。なお、〈Disco Dangdut〉というキャッチコピーには、ほとんど意味なし。
IkkeとIdaの熱烈ファンであるらしい、日本から発信のオヤジレコード様のご厚意による。
Bass – Poyo S.
Kendang – Madi (5)
Nonstop Disco Dangdut Lagu-Lagu Abadi AWARA / Ikke Nurujanah & Ida Laila
MSC Records – MSC 0537 Released: Aug 1995
次項で2020年コロナ禍真っ只中のカバーを紹介する。