〈実力〉とか〈歌唱力〉ってのは、わたしの大嫌いな言葉だが、このYeni Inkaを形容するのに、ついつい使いたくなってしまう。ダンドゥットは、ディープな歌唱、定型的な歌唱法の罠に落ちなかったのが、最大の魅力であるのだが、こういう歌手が出てくるのも必然でしょうね。
中部ジャワ州のブロラ県(Blora)出身。小規模の都市Ngami, Kudusの間にあって、そうとう田舎っぽい所。なぜかダンドゥット・コプロのライブが多い町Patiも近い。出身地は別にして、現在どこに住んでいるのか不明。毎週毎週東ジャワ州でのスタジオ録音、ライブハウス、野外ライブがアップロードされているから、地元から通っているとは思えないのだが。
Yeni Inka ft Brodin New Pallapa - Sakit Rindu (Official Live Music)
ジャカルタの会社Global Musik Era Digitalから。この会社、8～9年前からポップ・インドネシア、地方音楽(Lagu Daera)などを出していたが、4～5年前から中部ジャワ、東ジャワの歌手を出すようになって、現在はジャワ語圏ダンドゥット専門レーベルみたいになっている。男の歌手Brodinは、長くコプロ界で活躍してきた人。
640,187 viewsPremiered on 2 Sept 2021
次はバニュワンギのAneka Safari Recordsから。東ジャワ州のダンドゥット系レコード会社としては安定した大手といってよいでしょう。
Yeni Inka Ft. Kevin Ihza - Sakit Rindu (Official Music Video ANEKA SAFARI)
1,097,641 views Premiered on 13 May 2022
Sakit Rindu -Fendik Adella ft Yeni Inka- OM ADELLA
スリン奏者兼歌手のFendik Adellaとのデュエット。
5,714,914 views Premiered on 3 Jul 2021
この歌Sakit Rinduの作詞作曲はManthous。1950年、ジョグジャカルタ特別州のGunungkidul県生まれ。2012年に死去しているから、この歌もかなり古いと思われるが、発表年不明。
「夫も子どもも忘れて」「もう、わたしの心は変えられない」「もうこの村にはいられない」……と切々と歌う不倫ソング、だと思う……後半の歌詞がよくわからないけれど。もっとも、他の歌でも同様だが、歌詞がわからないと、こんな深刻な歌詞とはとても思えないデュエットが多い。
なんとなく、カバーが多いスタンダード・ナンバーだと思っていたが、現在活躍中の歌手のカバーが意外と少ない。レパートリーの広いNella Kharisma, Via Vallen,Eny Sagitaなど、ざっと検索したかぎりでは無いようだ。Tasya Rosmala, Jihan Audyも無い。野外ステージ・コプロ歌手の代表といえるLala Widi とGery Mahesaコンビも最近出たばっかり。
その反対に、（コロナ禍のせいもあるけれど）野外ライブが少ない、ここ２、３年に出てきた若い歌手のカバーが多い。Happy Asmara, Esa Risty, Woro Widowati, Damara De, Sasya Arkhisna などなど。このYeni Inkaバージョンの影響でのリバイバルなのかもしれない。
そのうち若い歌手のバージョンも紹介しよう。
おっと、失礼、Yeni Inkaってまだ21歳でHappy Asmaraよりずっとずっと若いんだ。
