世界の果てでダンドゥット

ダンドゥットは今、現在が一番おもしろいぞ!

1964年2月7日、ビートルズ記者会見 ; ベートーベンをどう思う?

それで、リンゴが「詩が好きだ」と答えた、という有名なジョーク。ずっとずっと気になっていたんだけど、これ、ちゃんとニュアンスが(日本語訳で)伝わっていないのだよ。

ザ・ビートルズともなれば、あらゆるデータがウェブ上にあって、1964年2月7日のジョン・F・ケネディ空港での記者会見のスクリプトもある。なお、映像付きのものが、いくつもYoutubeに上がっているが、肝心のベートーベンの質問の部分が切られているものばかりだ。

Beatles Press Conference: JFK Airport, American Arrival 2/7/1964 - Beatles Interviews Database

Q: "What do you think of Beethoven?"
RINGO: "Great. Especially his poems."

で、野暮なことながら、ジョークを解説する。

これは、スノッブな会話をちゃかしたもの、今で言うマウントの取り合いをからかったものなのだ。(と、思う。以下、"と、思う"は略す)

UKのミドル・クラス、中産階級の間の知的な会話で、いろいろな文筆家や思想家を知っているかどうか、マウントの取り合いをするわけだ。例えば、

バーナード・ショーをどう思うかね?」

「ああ、彼は好きだよ、特にポエトリーだね」

バージニア・ウルフをどう思うかね?」

「彼女の書いたものは好ましいね。特に詩がいいね」

などと、キザなことを言い合うわけ。いや、実際にこんな会話があったわけじゃないでしょうけど。作家や著述家の小説や批評を読むのはまだしも、詩なんて誰も知らねえよなあ。それで、相手をケムにまくわけ。

それで、「ベートーベンをどう思う?」という質問に対し、「つまんねえこと質問すんなよ!」「おれたちがベートーベンを知らないとでも思うのかい?」などと応えずに、「彼は偉大だ。特に詩がすばらしい」とトンチンカンな返答をするわけ。

これ、たぶん、アメリカの記者連中にも通じていないと思う。リンゴの返答は、あまりに絶妙で、アドリブだとは思えないんだよ。きっと、UK内で、何度も同じような質問をされて、同じような答を言っているのじゃないかって気がする。ジョン・レノンあたりが考えそうな答で、リンゴが真似したのかもしれない。あるいは、モンティ・パイソンあたりに元ネタがあるのかもしれない。

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ザ・ビートルズアメリカ遠征の第一の目的は全国ネット局CBSエド・サリバン・ショーに出演することだった。だから、CBSでは、一日中ザ・ビートルズの話題を流していた。

一方、裏番組、別の局NBCのThe Tonight Show Starring Johnny Carsonで放送された曲がつぎ。サム・クック、全国ネットテレビで新曲を披露するも、ほとんど反応なし……。

Sam Cooke - A Change Is Gonna Come (Official Lyric Video)

www.youtube.com

ザ・ビートルズは、エド・サリバン・ショーのほか、カーネギー・ホールで2月12日にコンサートを演っている。(短いプログラムで、夜に2回公演)この音源はまったく存在せず、謎のコンサートである。

同じ日のニュー・ヨーク、昼と夜の2回のギグをやったのが次。(しかし、この人のカタカナ表記、めちゃくちゃたくさんあって困るよね。マイルズ・ディヴィズあるいはマイルズ・デービズにして欲しいけど、語末の/z/音を「ス」で表す慣習が定着してしまったようだ)

Miles Davis- February 12, 1964 Lincoln Center, NYC [1st set] (My Funny Valentine/ Four and More)

www.youtube.com