世界の果てでダンドゥット

ダンドゥットは今、現在が一番おもしろいぞ!

インドネシアの食料・栄養統計

前々回にちょっと触れた、総務省の世界の統計2022を使って硬い話だ。確定値が発表されたあと引用する数字が多いので、2018年や2019年、つまりコロナ禍以前の確定値が多い。

長い話なので、BGMを聞きながら

Iwak Peyek - Trio Macan - OM ADELLA

 Premiered on 18 Sept 2021 (歌の解説は一番あとに)

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インドネシアの各種の数字が信じられないくらい良い。さすが20年近く経済成長が続く人口大国だ。最初に悪いことにも触れておくと、乳児死亡率が高く、結核も多いし、平均寿命はOECD諸国より10年くらい短い。

 

1人当り供給食料(2018年)kg/yearをわたしが365で割ったものも示す。

穀類すべて259.5    711g/day
   小麦36.8  101g/day = 372kcal
   米   195.3    535g/day = 899kcal
  差の27.4kgは主にトウモロコシと思われる  コーンミールとして 75g/day = 272kcal
イモ類 69.1 189g/day 
砂糖  20.0  55g/day = 211kcal
豆類   0.9  2.5g/day
野菜類   44.5  122g/day
果実類   66.1  181g/day バナナを含むと思われる
肉類       13.1  36g/day
卵類         6.2  この数字おかしい 一日47g、年間16~17kgになっているはず。生産量を人口で割った数字でも、年間一人16~17kg。つまり、一日一人1個弱。
魚介類    44.2  121g/day

(なお、豆類にはダイズが含まれていないはずだ。ヨーロッパの食生活から統計が起こされているので、油脂植物としてのダイズは豆類に集計されていないはず。もっともインドネシアの場合、ダイズの消費も少ない)

イモ類は、伝統作物であるヤムイモやタロイモの生産・消費はもう低くなっているはず。サツマイモとキャッサバが中心で、キャッサバ粉というのは、あのタピオカ粉のことだけれども、インドネシアはkrupukというクラッカー(エビせんなどと訳されるがエビ味は少ない)にしたり、ぷよぷよの味なしくず餅みたいにして食べる。ポテトは涼しい高地で作られる商品作物で、ヨーロッパと違って安い食品ではない。

まず、注目すべきは米が自給できるようになり、供給量が毎年増えていること。米が自給できると言っても、カロリーが自給できるわけではなく、かなりの量の小麦を輸入している。上の数字の小麦は100%輸入。さらにトウモロコシ、キャッサバでカロリーを補っている。

同じく2018年のデータで、1人当り熱量供給量

総カロリー2,884 kcal
穀類       1,747 kcal  精白米だけだと1040g、約6.9合
イモ類      190kcal キャッサバ粉にして54g。ただしサツマイモの消費も多い。
砂糖類      193 kcal  約50g上の供給量にほぼ合致する
豆類          8 kcal
野菜類       42 kcal 
肉類         57 kcal
卵類         25kcal この数字もおかしい  これだと3日に1個だが、生産量から見て、一人一日1個ぐらい、70kcalのはず。
乳製品       20kcal  約30cc
魚介類       84 kcal
その他      518 kcal

ここで問題なのは、「その他」の518kcalだ。主に油脂、それにアルコールも含まれていると思われる。果物も含まれているのだろうか? この「その他」がヨーロッパ諸国北米で高く、インドネシアは最低クラス。これは良い数字といえるだろう。OECD諸国はみんな油脂の過剰摂取を抑制しようとしているのだから。

ただし、肉類、卵類も低く、貧血やその他の栄養不足とリンクしているだろう。インドネシアは卵がおいしくて、みんなたくさん食べていると思っていたが、予想以上に低い。 (ニワトリの卵、肉に関しては、FAOのデータで別の記事を書く予定)やはり動物性タンパク質の不足が低栄養や病気の原因になっていると言わざるをえない。

他に良い数字としては、砂糖の消費が少ないこと。砂糖の消費は中国だけが例外的に低く、ほかはアジア、ラテンアメリカ、ヨーロッパ・北米と高くなっている。日本(245kcal)は一見砂糖漬けの生活に見えるが、先進国では最低。フィリピンやパキスタンと同じくらいだ。砂糖が貧民のカロリー源になっている時代に、インドネシアは持ちこたえている。色付き炭酸砂糖水の過剰消費が心配されているが、それほど増えていない。まあ、ほんとにクソ暑い時は、真水がおいしいわけで、砂糖水は飲みたくなくなるけどね。

インドネシアが砂糖漬けに陥っていない、というのはスゲエことなんだ。もともと、オランダがジャワの陸地を支配したのは、ヨーロッパ向けの砂糖を生産するためだ。住民の稲作地を潰し、輸出用商品作物を強制栽培させたのだ。砂糖経済はインドネシアのガンだったのだ。それが、サトウキビ生産が年々低下してゆき、現在は砂糖輸入国になった。あんなもん、売りたい国はたくさんあるから、買えばいいのである。その分、稲作地、畑作地が増えているわけだ。

じゃあ、その金はなにを売って、何を輸出して捻出するか? 天然ガス少々、養殖のエビ、繊維製品や軽工業品も輸出しているが、大きいのは、アブラヤシ(西アフリカ原産)の油脂、天然ゴム、コーヒーなど、永年作物に含まれる農業生産物である。

インドネシアの土地利用を見ると、世界の国々と比べて、突出して多いのが、永年作物地、なんと25,000,000ヘクタール、日本の国土総面積の70%近くで、世界で一番。これが、おもにゴム園とアブラヤシ園なのだ。コーヒーやお茶も生産量は多いが、それほどの面積ではない。世界中のタイヤと洗剤と揚げ油のために熱帯林を潰してプランテーションにしたもの。将来的に不安であるが、現在インドネシアの主要輸出品である。GDP構成で農業の割合が多いのも、これがあるから。米やイモや野菜や魚も就業人口は多いものの、帳簿上の利益=GDPに反映される数字は高くない。

(ロシア対ウクライナ戦争で、ウクライナ食用油輸出が激減し、世界的に食用油が高騰、その結果、国内需要を守るためにインドネシアがパーム油の輸出をストップ。国の内外から批判が続出。すぐに禁輸解除。という騒動がありました(2022年4月から5月)禁輸の結果、インドネシアの損失は520億円とか。どうでもいいけど、このニュースで、アブラヤシとココヤシの区別がつかない人が多いってのが判った。それから、例の〈持続可能なエネルギー〉に、アプラヤシ・オイルが含まれているそうで、熱帯林を潰した結果の油がサステイナブル?持続可能ってのはどういうわけだい? てなことも知った。)

食料の話にもどる。魚介類の供給はここ10年で2倍ぐらいに増えている。日本・韓国よりは低いものの、世界的に見ると高い数字。しかもインドネシアの場合、ほとんど自国で生産、水揚げされたものだ。それに、日本のように、一番栄養素が少ない部分を生で食べるなんてことはなく、魚介類を全部利用する調理法・保存法が普及しているので、栄養上の貢献はさらに高いと思われる。

輸入・輸出統計を見ると、食料・食品に関しては、小麦以外、インドネシアは輸出も輸入もほとんど無い。(詳しい分析はわたしの手に余るが、化学肥料も自国の生産でほぼ間に合っている)

海で採れたもの、田んぼや畑で作ったもの、お茶やコーヒーやタバコを国内でぐるぐる回して経済を動かしている状態だ。GDPに反映する利潤は少なくとも、雇用が生まれ、若いものがスマホとモーターバイクを買う金は得られるといった感じでしょうか。ちなみに、モバイル電話普及率はアフリカ以外は先進国も中進国も差がなくなっている状態。モーターバイク普及率はインドネシアが台湾に次いで世界2位らしい(ASEAN諸国全体を含めた数字が得られないし、二輪の統計には三輪車も含まれているので断言できないが、タイやマレーシアを抜いているようだ。(オートバイのことは、ASEANのデータが見つかったので、そのうち書こう。ベトナムよりは普及率少ないようだ)

というわけで、問題もあるものの、食料自給国はエライ!

さて、最初のビデオの歌の解説。Trio Macanという三人組の2012年の大ヒットだが、メンバーが完全に入れ替わっている。その新メンバーによる再演。

歌詞は、コミカルなナンセンス・ソング。遠くからよく来てくれたね、トリオ・マチャンが歓待しますよ~、という歌なのだが、題名のIwak Peyek というのは干し魚のこと。干し魚と言っても開きを干したおいしいものじゃなくて、この歌の場合、コチコチに固まった煮干しみたいな魚だろう。それに、Nasi Jagung。これはひき割りトウモロコシを混ぜて炊いたご飯。米の端境期や米を買えない貧しい人が食べる糅飯(かてめし)のこと。もちろん、友だちや恋人を歓待するなら、こんなもの出すわけないのだが、言葉のひびきの面白さで作った歌。