世界の果てでダンドゥット

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ビヨーンズ『夢さえ描けない夜空には』MV、『銀河ヒッチハイク・ガイド』のオマージュがあった

はてなブログ「未来は私のものよ」の記事で知りました。いやはや、熱心に掘っている人がいるものだ。

cotto726.hatenablog.com

BEYOOOOONDS『夢さえ描けない夜空には』Promotion Edit
856,167 views  3 Mar 2023
作詞 : 児玉雨子 作曲 : 星部ショウ 編曲:加藤裕介
MV Director:植木秀治
協力:パシフィックフィルハーモニア東京

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これ、歌もいいし、アレンジもいいし、このグループの子たちもかわいいね。日本のポップ・ミュージックもまだまだ元気なのだ。と、いうか、自分の好みに合わなきゃ、最初の10秒でスキップしていたでしょうね。

それで、このミュージック・ビデオ、映画版『銀河ヒッチハイク・ガイド』のオマージュなんだ。2:50~あたりからのイルカが出てくるシーンがそれ。元ネタは以下のタイトル。(コーラスが始まるのは1:50~)

So long and thanks for all the fish - Hitchhiker's Guide (HD)

www.youtube.com

このタイトル・シーンだけじゃ判らないけれど、有名なマッコウクジラのシーンが、雲の上を泳ぐイルカの場面に転用/オマージュされている。歌の歌詞も『銀河ヒッチハイク・ガイド』のテーマからインスピレーションを得ているのでしょうか?

ここ。元ネタではマッコウクジラなんだけど

以上、今日の発見でした。

で、終わってもいいけれど、この『銀河ヒッチハイク・ガイド』をいちいち説明するには、概略だけで1000字は必要。ウェブ上には情報が溢れすぎて、まったく知らない方が調べるには、途方もなく大変なのじゃなかろうか。

実際、上のビヨーンズのミュージック・ビデオで『銀河ヒッチハイク・ガイド』のオマージュを指摘しているのは見つからない。アイドルJ-POPファンとSFファンって、それほど離れていないと思うけど。

君が君として生まれてきたことって
長い長い時の
たった一度しかないんだ
美しいことなんだ

こんな実直で一生懸命なJ-POPの歌詞ってのが、わたしは苦手なのじゃ。

銀河ヒッチハイク・ガイド』の作者ダグラス・アダムズは、Amazon.co.jp河出文庫版の紹介によれば

1952-2001年。英ケンブリッジ生まれ。1978年BBCラジオドラマ「銀河ヒッチハイク・ガイド」脚本を執筆。翌年、同脚本を小説化し大ベストセラーに。モンティ・パイソンの脚本に携わっていたことも。

という人物なのだけど、確信的無神論で、聖書の記述をそのまま信じる原理主義創造論をテッテー的におちょくったのが『銀河ヒッチハイク・ガイド』。ブラック・ユーモアと論理ギャグとパロディとドタバタと駄洒落をぎっしり詰め込んだ作品なのだ。モバイル・デバイスを初めて(?)SFに用いた作品、巨大人工頭脳をテーマにした作品でもあります。

マッコウクジラのシーンも量子理論のパロディというかモジリだと思うが、とてもじゃないが、わたしは説明できないので、どっか別のところを探してくれ。「たった一度しかない」状況で生まれた美しいマッコウクジラ君は、数分後に地表に激突し、ぐちゃぐちゃの肉塊になるという、ブラックなシーンであります。そして生まれたばかりのマッコウクジラ君の語り口は、実は『フランケンシュタイン』のパロディなのだ。

フランケンシュタイン』をちゃんと読んでいる人はあまりいないでしょう。古典SF研究者の通称ヨコジュン横田順彌が発見したように、日本最初の翻訳は『國のもとゐ』という女子教育推進を目的とする雑誌に発表された。けっこう啓蒙主義的で教育的な小説なのだ。

わたしのKindleには原書版が入っているので、座右の書としていつでも引用できるのだ。(なお、翻訳は見ていない)

黄色のハイライト | 位置: 2,092 マッコウクジラの誕生シーン
   This is a complete record of its thought from the moment it began its life till the moment it ended it.

   Ah…! What’s happening? it thought.

   Er, excuse me, who am I?

   Hello?

   Why am I here? What’s my purpose in life?

   What do I mean by who am I?

   Calm down, get a grip now…oh! this is an interesting sensation, what is it? It’s a sort of…yawning, tingling sensation in my…my…well, I suppose I’d better start finding names for things if I want to make any headway in what for the sake of what I shall call an argument I shall call the world, so let’s call it my stomach.

  (中略)
   And wow! Hey! What’s this thing suddenly coming toward me very fast? Very, very fast. So big and flat and round, it needs a big wide-sounding name like…ow…ound…round…ground! That’s it! That’s a good name—ground!

I wonder if it will be friends with me?

And the rest, after a sudden wet thud, was silence.